2015年5月26日火曜日

「繋」

とある高校サッカー部の話。
その高校は学校と寮が離れていて自転車通学で20分くらいかかります。
3年前の春先、学校から帰る途中で部員が道で会ったお婆ちゃんに「こんにちは」と挨拶しました。
次に来た部員もまた「こんにちは」と挨拶、また次に来た部員も同じく。
次の日からお婆ちゃんは同じ場所同じ時間にそこで彼らと挨拶するのが日課となりました。
雨の日も雪の日もお婆ちゃんはいつもの場所で彼らを待っていてくれました。
そして「こんにちは」が、「ただいま!」になりました。
そして「おはよう」も始まりました。
ある日の事お婆ちゃんは部員の一人を呼び止めて手紙を渡します。そして「あんた達はどこの学校の生徒さんだい?」と聞き、初めて◯◯高校の生徒だと知ります。
その手紙にはこのように書かれていました。

「高校生の僕達のただいまの言葉にお婆ちゃんはいっぱいのパワーを頂いています。一人一人が優しい気持ちがなければ言葉かけてくれないよね。ありがとう、ありがとう。全員にお礼を言います。又お婆ちゃん見つけたらただいまと声かけてね。家に帰ると涙出るよ。一人で暮らしていると淋しくて、お婆ちゃんも元気におかえりと言うからね、みんなに会えるのが楽しみです。」

毎年2月に3年生の送別会がグランドで行われます。
お婆ちゃんはその席に招待されました。
なんとお婆ちゃんはその時の1年生から3年生までの名前を全員覚えてきてくれました。
そして出会いから1年が経った年、サッカー部は全国大会に出場を決めました。
その全国大会1回戦にお婆ちゃんは応援に来てくれました。
それだけではなく県内の大会の時にもお婆ちゃんはいつも応援に来てくれました。
そしてその年の送別会にも招待、お婆ちゃんは寒い中ニコニコと孫を見守るような顔でグランドで見送ってくれました。
新年度が始まりました。この代がお婆ちゃんと出逢った経緯を知る最後の年代です。
残念ながらお婆ちゃんを全国大会に連れて行く事は出来ませんでした。
そして送別会の時期、お婆ちゃんには招待の連絡が来ません。
送別会は2年生の父兄が企画立案します。
2年生の父兄はお婆ちゃんの事も連絡先も知りません。
3年間付き合ってきてお婆ちゃんは部員の名前まで覚えています。
お婆ちゃんは行動に出ました。
ちょっと珍しい苗字の部員を電話帳で調べました。すると3件ヒット。
最初の1件目が、部員のお父さんの実家でした。
実家から連絡を受けた部員の家は直ぐにお婆ちゃんと2年生の役員に連絡、なんとか送別会に参加して頂きました。
お婆ちゃんに寄書きとプレゼントを渡し、お婆ちゃんからお手紙を頂きました。
サッカーだけじゃない、勉強だけじゃない、普通なら出逢えないような人と出逢えた事。お婆ちゃんの言葉を忘れずにこれからの出逢いを大切にして欲しいと思います。

最後の手紙、個人名が出てる部分もあるので転載はご遠慮ください。

お婆ちゃん子供達がお世話になりました。いつまでもお元気で。





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